2014/06/06

ミツいろの雨














あんなに清々しかった5月は春と共に去り、
初夏の暑さに梅雨入りの湿気が合わさって、
気温に厚みが出来始めた今日この頃。
まぁ、
たんに蒸し暑いって事なんですけどね。
夜寝る時、
蒸し暑いので窓を開けると、
ぬるい風と一緒にカエルの鳴き声が部屋に流れ込んで来て、
明かりを消した真っ暗な部屋が田んぼと繋がったような錯覚を覚える。
目を閉じれば、
外にいるのとさして変わらない感覚。
そのまま夢うつつになれば、
夢なのか、現実なのか、
部屋の中にいるのか、
外にいるのか。
カエルの鳴き声だけが現実のようで、
もしかしたら、
遠い昔の記憶の音を聞いているのかもしれない。
曖昧なぬかるみを漂っていると、
急に大雨が降り出し、
雨粒が窓から吹き込んできて目が覚めてしまった。
あわてて窓を閉めるとまた蒸し暑い。
カエルの鳴き声も聴こえない。
雨の音だけにに包まれて、
また夢うつつ。






































































雨音で目が覚めた時、
覚める直前まで見ていた夢の中も雨だったりする事がある。
耳から入る情報が夢に影響しているんだろう。
その夢は記憶の中の忘れていた、
遠い昔の雨の日の出来事だったりする。

高校生の頃大好きだった子と一緒に一つの傘で、
奈良の三条通をあても無く歩いた。
大好きだったけど告白しなかった。
しないほうがいいと思ってた。
今でもしないで良かったと思ってる。
最初は何やかやと話していたけど、
終いには話すことも無くなって、
それでも一緒に只ひたすら雨の中を歩いた。
はたから見ればカップルに見えただろう。
それだけで良かった。
話す事が無くても嬉しかった。
このまま雨がずうっと止まないで欲しかった。
このまま道がずうっと続いて欲しかった。
それだけで良かった。


























































やがて雨が止んで、
道も尽きてしまって、
二人は駅に着いてしまいました。
何時ものように少し話して、

「それじゃぁ、バイバイ」

って、その子の声が聞こえた時、
目が覚めた。
今聴いたばかりのように、
耳にはその子の声がまだ残ってる。
何だか泣けてきた。

その子と一緒に歩いたのはそれが最後だった。
本当は好きだと言いたかった。
もっと一緒に居たかった。



窓の外の夜明け前の空は、
僕の甘い蜜のような夢とあいまって、
ミツいろに染まった雨が僕を包んで降りつづいていました。




















今日も最後までお付き合い下さってありがとうございました。




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ダーク・ブランコ  Dark Blanco




みずいろの雨   八神純子