2013/11/08

オンリーエビフライ






こんにちは。
めっきり冷えてきた今日この頃、
ついつい口から”寒い”と言う言葉がもれてくる。
車に乗ると、
足元のエアコンの吹き出し口から温かい風が出て来て、
つま先から秋の深まりを感じています。
次の月曜日からグッと冷え込むらしく、
どうやら秋は、
大股開きで過ぎて行くかもしれないですね。
とは言え、
昼間はやはり過ごしやすく、
稲刈りの終った田んぼの景色や、
何処かで籾殻を焼いている香ばしい臭い。
この時期独特の情景に、
懐かしい安堵感と、
何故かよく分からない不安感に駆られてしまいます。
冬に近づき、
枯葉が舞い落ちて行くように、
心の中の何かが1枚、2枚と散るような気になるからなんでしょうか?
夏に日焼けした顔が、
だんだん色あせて白い中年に戻って来ました。
冬の寒さは、
景色から色を奪って行くように人からも彩を奪うんでしょうね。
ちょっぴり寂しい気分で車に乗ろうとした時、
車のガラスに映る自分を見つけ、
冬だろうが夏だろうが、
1本、2本と散っている僕の頭頂部を見て、
よく分からない不安感はこれの事かと、
秋の日はつるべ落としのごとく、
日焼け顔が退色してしまった僕のブログにようこそ。
木々は春になればまた葉が茂るけど、
僕は禿げるだけ。
不安感が茂るだけの僕ですが、
今日も少しお付き合いくださいませ~










































僕が子供の頃、
日々の食事は全て祖母が作ってくれていました。
祖母は大正生まれでしたから、
作ってくれる料理も大正風。
秋冬のこの時期の料理と言えば、
里芋を煮たやつ、
ジャガイモを煮たやつ、
ゼンマイを煮たやつ、
茄子を煮たやつ、
鮒(フナ)を煮たやつ!?
と、
材料は違えど、
色合いは全て茶色系の煮物ばかり。
サラダなんて出る事も無く、
僕の舌を醤油とみりんがかすめて行くばかり。
ふとテレビを観れば、
西川きよしと芳村真理が司会の料理天国がやっていて、
元相撲力士の龍虎が、
フランス風に料理された、
スズキの焼いたものを美味しそうに食べている。
その当時、
祖母が魚をこんな風に料理してくれたなら、
僕も魚が好きになっただろうな~
と、
目の前に横たわる鮒の煮物を睨みつけていました。
なので、
食が進みずらい僕と兄のために祖母は、
マルシンのハンバーグや、
イシイのミートボールなどを用意してくれ、
僕は成長期の食事の半分をインスタント料理で過ごしました。
あの当時、
世間は高度成長期。
我が家は裕福ではありませんでしたが、
世間には彩りがありました。
色々な外国文化が沢山取り込まれて来ていて、
誰に貰ったのか田舎の我が家にも、
ナイフとフォークなんて物もありました。
しかし、
スプーンは頻繁に使うものの、
ナイフとフォークはめったに使わない。
煮物なんかは箸で食べるほうが食べやすいし、
イシイのハンバーグなんかはとても柔らかかったので、
箸で切ってご飯の上に載せればそれだけで料理天国?
なので、
我が家で西洋の食器はまったく活躍していませんでした。
そんなある時に父がこれではいけないと思ったのか、
お前達も大人になった時に恥をかかない為に、
ナイフとフォークの使い方ぐらいは覚えなさい!
と、言い出しました。
そしてある日の夕食時、
食べ方だけ西洋風食事会が我が家で催されました。
右手にナイフ、
左手にフォークでマルシンハンバーグを食べる僕。
ご丁寧にご飯も平皿に盛って食事開始。
しかし、
なんでフォークが左手なんだろう?
フォークは利き手の右のほうが絶対食べやすいのに!
なんでご飯を平皿に盛るんだろう?
食べきるまでにご飯がカピカピになっちゃうじゃないか!
それに、
何故ご飯をフォークの背に乗せて食べるんだ?
不自然だし食べにくい!
普段使わない筋肉を使い、
食べ終わった後は何だかヘトヘトで、
その割りにお腹は満足していない。
と、
不満たらたらでしたが、
その後も何度か食べ方だけ西洋風食事会は催され、
小学生ながら、
そこそこきちんとナイフとフォークを使えるようになりました。
十数年が経ち、
大人になって初めてホテルの高級レストランで食事をする事に。
あの時の練習の成果が試されます。
お上品にナイフとフォークを使う僕。
得意げにフォークの背にご飯を乗せた僕でしたが、
周りを見ると、
ご飯をフォークの背に乗せて食べているのは、
僕だけでした。









































子供の頃、
日曜日になると、
よく父に連れられて車でドライブをしていました。
主に山などを一日中ドライブしていましたから、
途中で食事をしなければなりません。
道々によくある食堂や、
うどん、そばの店、
そしてレストランなど。
なので、
日曜日は外食できる日でもありました。

ドライブ時にレストランへ行った時、
練習したナイフとフォークが使えるので嬉しかった。
大人になった気がするんですよね。
それに、
小学生の僕が上手にナイフとフォークを使っていると、
ウエイトレスのお姉さんが、
あら、上手ね!
と、言ってくれたりするので、
ますます嬉しくなっちゃうんですよね。

そんな楽しいはずのドライブ。
でも、
時々父の機嫌が悪い日があったりするんですよね。
何か今日は朝から父の顔に雲りがあるな~
なんて思っていたんですが、
車が進むほどに父の雲行きが悪くなる。
そんな中、
父は道に迷ったらしく、
助手席の僕に地図で現在地を探せと言います。
僕は小学生でしたから、
助手席に乗っていても見ていたのは外の風景ぐらい。
道路標識なんて見ていないし、
今何処にいるのなんか分かりっこない。
なんで、
地図を見たったちんぷんかんぷん。
そんな僕を見て益々父は機嫌が悪くなり、
道に迷ったのはお前のせいだ!
などと言い出す。
外はとてもいい天気のドライブ日和なのに、
車の中は土砂降りでした。
ダメ押しに、
そんな気分でレストランに入った土砂降り親子。
僕はハンバーグとライスを注文。
父はハンバーグとエビフライのコンボとライス。
注文したものが届くまで押し黙る土砂降り親子。
ようやく食事が運ばれてきました。
僕は、
食事の時ぐらい機嫌を直さなくてはと思い、
僕の料理よりエビフライが多い父の料理をさして、
僕のよりいいね!
と、言ましたなら、
親だからあたりまえや!
と、ピシャリ!
結局、
その日は一日中土砂降りでございました。













































たった一つのエビフライの出来事。
父の言った一言が、
何十年経った今も忘れられない。
過ぎ去った過去は、
良い事ばかりが思い出されますが、
ふとした事で、
そうでないものも鮮明に思い出される事がありますね。
僕にとって悪い思い出はエビフライで、
良い思い出はご飯をフォークの背に乗せる事。
洋食を食べるたびに複雑な思いに駆られるなら、

フォークの背にエビフライを乗せれば、

まよわずにいれるのに~♪













フォークの背に乗せたエビフライを誤って床に落とし、
思い出とご馳走を台無しにしてしまう僕のブログにお付き合い下さって、
誠にありがとうございました。
 
こちらの生き物たちはフォークの背には乗せず、
スプーンでがっつり味わっていただけるとありがたいです^^



Dark blanco



ロンリーバタフライ レベッカ