2012/11/02

イミテーション・ゴール



こんにちは。
僕の家の近所に僕の兄が住んでいる実家があります。
僕は時々顔見せついでにそこで夕食をとっているんですが、
先日、その実家の台所のテーブルの上に何やら置いてある。
手に取って見ますと、”東京ばな奈がぉー”と描いてある。
どうやらおばさんのお土産らしい。
開けてみるとバナナの形のスポンジケーキで、
何故かゼブラ模様が付いていました。
死ぬまでダイエット中の僕には毒物であります。
これは見なかったことにしよう!と、
その東京ばな奈をテーブルの端に追いやり夕食をとりました。
食事も終わり、お茶をすすりながらテレビを少し観ていたんですが、
追いやったはずの東京ばな奈が頭から離れない。
あかん、あかん!無視、無視!
でも手が勝手にぃ~・・・・
1つくらいならいいかな~
我慢できずにかじったスポンジケーキの中は、
甘~いキャラメル+バナナ味の濃厚なカスタードがトロ~リ・・・
ど、毒だ!猛毒だっ!!
2つ目をパクリ・・・
あかんよ、あかんよ~!!
三つ目をパクリ・・・
頭の中では体重家の針がグルグル回りだしています。
4つ目をパ・ク・リ・・・・!
もう何も聞こえないし、何も見えない・・・

1つ102カロリーもあるものを4つも食べてしまった・・・
箱の中にはあと4つ残ってる。
それは兄の分なので食べませんでしたが、
1箱全部を自分が貰っていたらどうなっていた事か・・・

そんな己の卑しさにむせび泣く僕のブログですが、
今日も少しお付き合いくださいませ~























寒くなってくると何をするにもおっくうになります。
家の事であれば、掃除や台所の洗い物など、
水を使う仕事は特に嫌に成ります。
でも洗濯はちょっと嫌じゃない。
洗濯機の中でグルグル回る洗濯物を見ていると、
たまに目が離せなくなり、数分見入ってしまう事がよくあります。
今時は全自動で何もしなくていいですしね。
でも昔の我が家にそんなものはありませんでした。
洗濯は主にばあちゃんがやってくれていたんですが、
昔の事ですから、洗濯機は2槽式です。
なにかと面倒なんですよね~
今より手間も時間もかかります。
冬になってくると自然と洗濯頻度が少なくなって来る。
すると、着る物がだんだん少なくなる・・・
前に書いたように、
靴下が急激に乏しくなって来る訳です。
それよりもっと早く乏しくなるのが下着のパンツでございます。
パンツは靴下のように人に見られるものではないので、
どんなものでも良い様なもんですが、
ゴムがダルダルの不恰好なものは穿きたくない。
その当時、下着といえばYGかBVDでした。
その下着のパッケージの写真のようにかっこよくピタッと穿きたかったんです。
しかし我が家の下着はカタカナでグンゼと書かれたおっさんパンツ。
腰のゴムの部分がチョーおっさんなんですよね。
たまにYGやBVDを買って貰えたんですが、
嬉しくてそればっかり穿くからすぐヨレヨレのダルダルになってしまう。
残っているのはおっさんパンツのみ。
そこに何時の間にやら紛れ込んだ毛糸のパンツも加わって、
パンツに関してはかなり悲しい少年時代でございました。























そんな小学生のある寒い冬の朝、
登校時間ギリギリまで寝ていた僕は何時ものように飛び起きたんですが、
下着が入っているタンスの前で立ち往生してしまいました。
僕のパンツが一枚も無いんです。
洗濯をする物が入っているカゴも空っぽ。
その横で恨めしく鳴り響く洗濯機の音が。
ウォ~ン、
ウォ~ン、
ウォ~ン、
洗ってある物も無く、
洗って無い物をもう一度穿く事も出来ず、
屈辱の毛糸のパンツでさえ渦の中・・・
は、穿くものがない。
もう一度タンスの中をひっくり返しますと、
1枚のパッチが出てきました。
い、嫌だっ!
これは絶対いやだっ!
しかし無常にも時間は迫ってきます。
嫌だといっても選択肢が無い訳ですから、
観念するしかありません。
屈辱のパッチをベルボトムのズボンで隠して小学校へ猛ダッシュ!
代謝の活発な子供にはパッチは物凄く暑いんですよね~
学校に着くと冬なのに僕一人汗ダラダラでございました。
そして朝の会で担任の先生が、
”今日の身体測定は4時間目です。”
しん・・・・
たい・・・・
そく・・・・・
て・・・・・・
いぃぃぃぃぃぃ?!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!!
忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
そこには、一人だけ冷や汗ダラダラなパッチ小僧が青い顔をして座っていました。



























困りました。
非常に困りました。
よりによってこんな日にパッチを穿いて来るなんて!
恨めしい!
洗濯がおっくうになる寒い冬も、
洗濯をこまめにしてくれないばあちゃんも、
身体測定する学校も、
全てが恨めしいっ!!
コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・ベ・キ・カ・・・
メラ、メラ、メラ
危うく心の中に魔太郎が来てしまいそうでした。

さて、恨もうが何をしようが4時間目がやって来ました。
幸いにも男子と女子は別々に測定。
しかし男子の目の方が心配なんですよね。
あ~!パッチはいてる~!
おっさんみたいや~!なんて言われたら、
この先ずうっとパッチマンなんてあだ名で呼ばれかねません。
まずは急にトイレに行きたくなったといってトイレに行き、
測定の順番を最後になるようにして、
他の生徒達のパンツをチェック。
が、誰一人パッチを穿いている愚か者はおらず・・・
どんどん順番が迫ってきます。
僕は遂に観念してズボンを下ろすときひらめきました。
これしかない・・・!
パッチの裾を内側に丁寧に折り上げ、
さもブリーフのように装えば誤魔化せるんじゃないだろか!と・・・
迷っている暇はありません。
即実行でございます。
が、想像とは裏腹に現実は、
慌ててるし、見られたら駄目だしでうまく行かない。
ようやく出来上がった僕のイミテーション・ブリーフは、
しぼんだオムツのようでございました・・・
これではパッチよりひどい。
心の中は絶望の雨が降り注いでいます。
ザー、
ザー、
ハイ、次のひと~
ザーーーー









子供というのは必要以上に人目を気にするもんです。
靴下に穴が開いてると貧乏と思われる。
毎日同じ服を着ていると貧乏とおもわれる。
パッチなんか穿いてるのは母親がいなくて、
ばあちゃんに育てらてるから年寄りくさいんだ!と、思われる。

だから、

靴下に穴が開いてても隠して開いてない振りをする。
この服が好きだから毎日着てる振りをする。
パッチなのにパッチじゃない振りをする。
 劣等感で誤魔化した末のゴールは、
ニセのゴールです。
貧乏を誤魔化すのは一生懸命働く父を誤魔化すことに、
着ている物を誤魔化すのは世話をしてくれてるばあちゃんを誤魔化すことに。

誰もそんなに他人の事なんて見ていないんですよね。
僕のしぼんだオムツは誰にも何もふれられず、
パッチマンと名づけられる事も無く、
それがちょっと寂しい気がした冬の午後でございました。